むすひ
タイトル | むすひ |
---|---|
団体名 | 神社本庁・神宮司庁 |
所在地 | 東京都渋谷区・三重県伊勢市 |
創刊年 | 1987年 |
種別 | 年1回 |
【主な内容構成】
小冊子『むすひ』は、神社本庁と神宮司庁が1987年以降、神宮大麻頒布用に毎年一回発行している広報誌。神宮大麻は伊勢神宮のお札のこと。神社本庁が同年、一千万体の神宮大麻頒布を目指し、「一千万家庭神宮大麻奉斎家庭運動」を始めたことが創刊のきっかけ。誌名の由来は、あらゆるものを生み出すとされる「産霊(むすび)」の清音。B5版のオールカラーで毎号16頁。若者世代が手に取りやすいように、親しみやすいイラストや写真がふんだんに使用されている。言葉使いも『神社新報』のように歴史的仮名遣いを用いた古風なものではなく、現代仮名使いを用いたうえで分かりやすい言葉選びがなされている。
内容に関しては、毎号「山」(平成17年版)や「子ども」(平成16年版)などのテーマが設けられる。例えば平成15年版のテーマは「月」で、「日本人とお月さま」「月と神々」「日本の神話と伝承(月の神様=月読命)」などの記事が掲載された。だが、式年遷宮や天皇の代替わりなど、特別な行事が相次いだ近年は、それらにちなんだ記事となった。例えば2016年には、伊勢志摩で先進国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)が開催され、各国首脳が伊勢神宮を「訪問」した。これを受け、平成29年版には「世界が見た伊勢神宮」として、各国首脳の記帳文が、鷹司尚武神宮大宮司のコメントとともに、写真付きで掲載されている。
本誌の最大の特徴は、毎号掲載される著名人へのインタビュー記事にある。人気の芸能人やアーティストが、自分にとっての神社や神道について語る。比較的若い著名人がよく選ばれていることからは、本誌が若者を「神道教化」のターゲットとみていることがわかる。神宮大麻とは何か、神棚のまつり方、参拝の作法など、神道の基礎知識が平易な言葉で、イラストや写真付きで説明されていることも、本誌が崇敬者の新規獲得を目指した広報誌であることを物語る。小冊かつ刊行頻度も少ない『むすひ』だが、そこには伝統を尊重しながらも、現代の感性に寄り添った布教のあり方を模索する神社界の姿が映し出されている。
【田中浩喜】2024年11月