アジア通信
タイトル | アジア通信 |
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団体名 | NCCキリスト教アジア資料センター |
所在地 | 東京都新宿区 |
創刊年 | 1982年 |
種別 | 月刊 |
【主な内容構成】
日本キリスト教協議会(NCC)の下部組織として存在していたキリスト教アジア資料センターが発行していたニューズレータである。それまで欧米に目が向きがちであった日本社会と日本のキリスト教会に向けて、アジアの国々ついての情報を収集し、関心を向けさせようと発行された。日本は欧米に追いつこうとするだけで、アジア諸国の抱える問題を理解しないばかりか、日本もその痛みを与える側であったことへの反省、つまり、帝国日本の植民地主義への謝罪と反省をするというトーンが全体を貫いている。
アジア諸国の中でも韓国についてはある程度情報が伝えられているが、それ以外の国については情報が限られていることにも意識的であり、当時情報が少なかった中国、台湾、フィリピンなどについても紙面が裂かれている。一般のマスメディアによる報道からはこぼれ落ちる情報が伝えられており、興味深い。
各号では特集や報告が組まれ、当時の時事問題についても踏み込んだ論述がされている。例えば「歴史教科書問題に関する日韓教会協議会」(1983年第9号)、「天皇制とアジア」(1983年第12号)といった具合である。現代においても議論が継続されている問題も多く、当時の社会やキリスト教会がどのようにこれらの問題を理解していたのかを垣間見ることができる。
また、アジアの国や地域を対象とした特集も組まれる。「中国の教会」(1982年第7号、「台湾の教会」(1983年第5・6合併号)といった具合である。中国では1978年に改革開放が始まったばかりであり、当時の中国キリスト教についての情報はごく少ない。台湾についても当時は1979年の美麗島事件(高雄事件)という大規模なデモと取り締まりが起きていた時代であり、1987年の戒厳令解除、1988年の李登輝の総統就任といった民主化に向けた時期でありながら、同時期に同じような動き(1980年光州事件、1988年戒厳令解除、全斗煥辞任)を見せた韓国の情報に比べると一般のメディアで伝えられることは少なかった。いずれも貴重な資料だと言えるだろう。
加えて1980年代に盛んであった東アジアの民主化運動におけるトランスナショナルな連帯におけるキリスト教ネットワークを通じた情報交換という側面からも本ニューズレターを再読する意味も少なくない。
【藤野陽平】2024年11月