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平成28年度版『自殺対策白書』の内容が、5月31日、閣議決定された。同『白書』によれば、2006年の自殺対策基本法制定から自殺防止対策が本格化。自殺の原因が現行の方法によって計上されるようになった2007年以降を見ると、50代男性の割合が減少した一方で、男女ともに70代以上の割合が増加した。2015年の自殺者数は24025人で、4年連続で3万人を下回り、経済苦に起因する自殺者がピーク時の2009年と比較して半減している。ほか、同『白書』では山間部(傾斜度の高い地域)ほど自殺率が高く、離島部は低いといった報告がなされている。全国の自治体を自殺率の低い順に並べると上位20自治体のうち10自治体が離島であることからも、離島部の自殺率の低さが注目された。 同『白書』を作成した厚生労働省の分析によると、山間部では病院や自治体職員などの「社会的資源」の少なさに加えて、家々が点在するために近所付き合いが少ないことから孤立する傾向が強く、自殺率が高くなっている。離島の多くも山間部と同様に過疎・高齢化が進み、「社会的資源」は少ないものの、住民は密集して暮らしており、都市部よりも流動性が低いことから「人とのつながりが自殺率の低さに寄与している可能性がある」とした(毎日・東京・夕5/31、産経・東京6/1ほか)。 また、孤独感が自殺率に影響を与えることについて、誕生日の自殺は他の日に較べて1.5倍になると、大阪大学の松林哲也准教授らのチームが、『国際科学誌』の電子版に4月、発表した。同チームは1974年から2014年の厚生労働省の人口動態調査データを分析。欧米では記念日を期待通りに過ごすことができない心的ストレスから自殺にいたる「誕生日ブルー」という仮説があり、日本でも同様の傾向が示された形(日経・東京6/5ほか)。 |